2. スケールアップに向けた課題
本項では、アンケート調査を用いて、スケール別の経営課題や重視する組織・人材戦略を概観し、スケール別の「成長の壁」を明らかにするとともに、それを克服してスケールアップを実現するための有効な取組等についての示唆を得ることを目的として、分析を進めていく。具体的には、人材育成の取組、ガバナンス体制の強化や経営の透明性を高めるための組織管理・運営、経営計画の策定・運用、DXの取組について確認していく。
①スケール別の経営課題
研究会では、「成長志向の経営者は、自社の成長段階に応じた課題を認識し、戦略を考える必要がある」と述べ、企業のスケールごとに成長に向けた課題と打ち手が存在することを示している。
最初に、事業者が独力で対応していくことが難しいと考えている経営課題について、スケール別に確認した(第2-2-18図)。この結果を見ると、
「人材確保・人材育成」、「デジタル化・DX」については、いずれのスケールにおいても高い割合となっていることが分かる。また、「経営計画策定」、「資金繰り」といった項目について、「10億円未満」で割合が特に高く、スケールが小さくなるほど割合が高くなっている傾向が見て取れる。「10億円未満」のスケールにおいては、支援機関 29 等を活用しながら、資金繰りの安定化や経営計画の策定などにより、成長に向けて経営基盤を整えることが重要であると考えられる。一方、「50億円以上~100億円未満」、「100億円以上」の比較的大きい事業者は、特に「脱炭素化・GX」、「M & A」の割合が高いことが分かる。「脱炭素化・GX」については、スケールが大きくなるにつれて、企業の社会的責任が増し、ステークホルダーからの要請が増加することや、大企業のサプライチェーンへの参画が背景にある可能性がある。
第2-2-18図 独力で対応していくことが難しい経営課題(スケール別)
| 経営課題 | 10億円未満 (n=16,531) | 10億円以上~50億円未満 (n=5,774) | 50億円以上~100億円未満 (n=894) | 100億円以上 (n=530) |
|---|---|---|---|---|
| 人材確保・人材育成 | 30.9% | 39.1% | 38.5% | 36.6% |
| デジタル化・DX | 24.0% | 31.3% | 37.0% | 34.3% |
| 販路開拓・マーケティング | 21.9% | 15.2% | 13.1% | 11.9% |
| 経営計画策定 | 21.6% | 10.4% | 7.7% | 6.4% |
| 資金繰り | 21.5% | 10.2% | 7.9% | 5.3% |
| 脱炭素化・GX | 15.5% | 23.0% | 26.6% | 24.9% |
| 事業承継 | 14.1% | 10.6% | 10.4% | 10.9% |
| M & A | 13.4% | 23.4% | 30.3% | 30.6% |
| 海外展開 | 11.8% | 13.9% | 15.5% | 16.8% |
| 生産設備増強、技術・研究開発 | 11.6% | 10.2% | 10.7% | 8.1% |
| 経営改善・事業再生 | 10.7% | 7.5% | 5.4% | 6.0% |
| 価格転嫁 | 7.9% | 9.2% | 7.0% | 9.8% |
| その他 | 1.5% | 1.5% | 1.8% | 1.5% |
| 特にない | 11.6% | 10.9% | 9.8% | 11.9% |
資料:(株)帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」
(注)1.複数回答のため、合計は必ずしも100%にならない。
2.ここでのスケールは、直近(1期前)の売上高に基づいて集計しており、1期前において「事業を開始していない」と回答した事業者は集計から除いている。
29 ここでの「支援機関」とは、商工会、商工会議所、よろず支援拠点、都道府県等中小企業支援センター、中小企業団体中央会、税・法務関係士業、中小企業診断士、金融機関等を指す。