事例:諏訪信用金庫による株式会社スギムラ精工の支援事例

長野県岡谷市の株式会社スギムラ精工は、自動車部品をはじめとした各種精密部品の設計、金型製作、加工を行う金属プレス加工業者である。同社は、顧客のニーズにワンストップで対応できる一貫した加工技術に強みを持ち、コロナ禍を経て売上げの増加傾向が続く地場の優良企業である。一方で、売上増加に伴う売上債権等の増加に加え、近年の資材高騰の影響もあり、増加が続く運転資金の資金繰りに不安を抱えていた。このような課題を認識した同社は、メインバンクの諏訪信用金庫に対し、現状の財務構造改善についての相談を行った。

相談を受けた諏訪信用金庫の奥山真司部長は、同社の今後の成長性を見込み、成長に応じた更なる資金調達の可能性を考慮し、他行を巻き込んだシンジケートローン 24 の組成を企図。既存の借入れを見直し、追加の運転資金実行も伴うシンジケートローンのスキームを実行に移すには、同社に対しての緻密な事業性評価が求められた。

そこで、同金庫はロカベンを活用し、「商流・業務フロー」及び「4つの視点」の観点から同社の強みを可視化し、今後も売上げの増加傾向が続くことの裏付けなど事業性評価の確認を行った。「商流・業務フロー」においては、工場の現地調査や同社の従業員との対話を経て、生産工程を含めた業務フローを図としてまとめた。理論に基づくプレス成型技術によって、加工性を高めるための前工程等を廃止した独自の生産工程により、コスト低減、生産数量増加を実現し、高精度部品をスピーディーに加工することが可能な同社の強みを可視化した。

「4つの視点」においては、同社の非財務的な強みである、経営者・内部管理体制に着目。創業者である父親から事業を受け継いだ長男の杉村博幸社長を中心に、技術部長を務める次男、製造部長を務める三男といった現場を熟知した役員による、必ずしも経営者の指示がなくとも自走できる、レベルの高い分業・管理体制といった強みに加え、総務部長として社長夫人がキーマンとなり女性が働きやすく男性社員も育休取得ができる働き方の体制整備と外国人技能実習生を含め人材育成を行ってきたことによる人的資本の厚さという強みを確認した。また、適切な給与の引上げにより社員のやる気を引き出してきている点にも注目した。定量的な側面のみならず、こうした定性的な強みとなる情報を引き出すことが可能である点もロカベンの特徴である。奥山部長は、適切な情報開示があったから、ロカベンによる整理がはかどり適切な事業性評価が行えたと同社を評価している。そして「金融は頼もしく、そして優しくなければならない。地域の企業様と一緒に成長を歩むことが地域の豊かさにつながる」と語る。

ロカベン活用による同社の経営状態や強みの情報は関係機関の共通認識となり、同社に対し諏訪信用金庫、商工組合中央金庫、長野県信用農業協同組合連合会は、2024年7月、総額18億6,000万円にも及ぶシンジケートローンを組成。同融資の活用により、長短借入金のバランスが是正され、将来予定する積極的な事業展開に向け、一層の経営基盤の強化に取り組むことが可能となった。作成されたロカベン、現在も同社の伴走支援に活用されている。

岡谷市のつるみね工場
岡谷市のつるみね工場

岡谷市のつるみね工場

強みの一である生産設備
強みの一である生産設備

強みの一である生産設備

杉村社長(左)と対話する奥山部長(右)
杉村社長(左)と対話する奥山部長(右)

杉村社長(左)と対話する奥山部長(右)

24 シンジケートローンとは、大型の資金調達ニーズに対して、複数の金融機関が協調して、同一の融資契約書に基づき融資を行う信用供与の方法のことである。