④まとめ
本項では、M&Aの実施状況、その目的や効果等について確認した。まず、我が国企業のM&A件数は近年増加傾向で推移しており、2024年には過去最多となっている。また、経済産業省「企業活動基本調査」のパネルデータを用いて、スケール別のM&A実施状況を見ると、スケールが大きい企業ほど、M&Aを実施している割合が高い傾向にあることが分かった。2017年度におけるM&Aの実施有無別に売上高及び経常利益の推移を確認したところ、M&A実施企業は非実施企業よりも、売上高及び経常利益をより高めていることが分かり、生産設備、技術・ノウハウといった経営資源の共有等を通じたシナジー効果の発揮により、売上高だけでなく経常利益も高めてきた可能性が示された。次に、M&Aの実施目的について、「スケールアップ」の事業者は、「横ばい・スケールダウン」の事業者と比べ、「市場シェアの拡大」、「人材の獲得」、「技術・ノウハウの獲得」等の回答割合が高く、特に「人材の獲得」で最も大きい差があることから、人材不
足というリソースの制約をM&Aによる「人材の獲得」で解消し、スケールアップを果たしてきたことが示唆された。
一方で、M&Aを過去に実施した事業者は、買収先の経営陣や従業員との関係構築に課題感を抱えていることが分かった。このような背景を踏まえ、買収先との関係構築など、経営統合を円滑に進めるための取組である、PMIについても分析を行った。PMIの取組状況別に実施したM&Aの評価を確認すると、「取り組んだ」と回答した事業者は、「取り組んでいない」と回答した事業者に比べて、実施したM&Aについて「想定以上の効果が得られた」と評価していることが分かり、PMIの取組はM&Aの効果を高める可能性が示唆された。また、多くの事業者では、経営者がPMIの主導者であることも併せて確認している。
事例2-2-5では、経営者自らが従業員との丁寧な対話を通じた経営統合に取り組み、M&Aを成功に導いた企業の事例を紹介する。