コラム

2-2-4

中小M & A市場における健全な環境整備に向けた取組

1. 中小M & Aガイドライン

中小企業庁では、2015年3月に、M & Aの手続や手続ごとの利用者の役割・留意点、トラブル発生時の対応等を記載した「事業引継ぎガイドライン」を策定した。その後、2020年3月には、後継者不在の中小企業のM & Aを通じた第三者への事業の引継ぎを促進するために、同ガイドラインを全面的に改訂し「中小M & Aガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(以下、「初版」という。)を策定した。

2023年9月には、初版に対して、M & A専門業者向けの基本事項や中小企業向けの手引きとして仲介者・フィナンシャル・アドバイザー(以下、「FA」という。)への依頼における留意点等を拡充するとともに、行政・民間における取組についても修正を図った「中小M & Aガイドライン(第2版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(以下、「第2版」という。)に改訂を行った。

さらに、2024年8月には、不適切な譲受側の存在や経営者保証に関するトラブル、M & A専門業者が実施する過剰な営業・広告等の課題に対応するため、第2版を改訂し、「中小M & Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(以下「第3版」という。)を策定した。

コラム
2-2-4①図
中小M & Aガイドライン(第3版)における改訂の概要

中小M & Aガイドラインの改訂(第3版)の概要

① 仲介者・FAの手数料・提供業務に関する事項

【中小企業向け】手数料と業務内容・質等の確認の重要性⇒(納得できない場合)他の仲介者・FAへの依頼、手数料の交渉の検討
【仲介者・FA向け】手数料(仲介者の場合、相手方の手数料を含む。)の詳細、プロセスごとの提供業務の具体的説明、担当者の保有資格、経験年数・成約実績の説明。手数料の交渉を受けた際の誠実な対応の検討。

② 広告・営業の禁止事項の明記

【仲介者・FA向け】広告・営業先が希望しない場合の広告・営業の停止、M & Aの成立可能性や条件等について誤解を与える広告・営業等の禁止。

③ 利益相反に係る禁止事項の具体化

【仲介者向け】追加手数料を支払う者やリプーターへの優遇(当事者のニーズに反したマッチングの優先実施、譲渡額の誘導等)の禁止、情報の扱いに係る禁止事項の明確化⇒これらの禁止事項は仲介契約書に仲介者の義務として定める必要。

④ ネームクリア・テール条項に関する規律

【仲介者・FA向け】譲り渡し側の名称の譲り受け側への開示(ネームクリア)前の、譲り渡し側の同意の取得、譲り受け側との秘密保持契約の締結の徹底。テール条項の対象の限定範囲の具体化・専任条項がない場合の扱いについての限定。

⑤ 最終契約後の当事者間のリスク事項について

【中小企業向け】最終契約・クロージング後に当事者間でのトラブルとなりうるリスク事項の解説⇒専門家の支援を受けつつ、自らでも確認することの重要性。
【仲介者・FA向け】リスクの認識時、最終契約締結前等に、当事者間でのリスク事項についての依頼者に対する具体的説明。

⑥ 譲り渡し側の経営者保証の扱いについて

【中小企業向け】士業等専門家、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談*や経営者保証の提供先の金融機関等へのM & A成立前の相談*の検討。
【仲介者・FA向け】上記*の相談が選択肢となる旨の説明・相談する場合の対応、最終契約における経営者保証の扱いの調整。
【金融機関向け】M & Aの成立前又は成立後に経営者保証の解除又は移行について相談を受けた場合の「経営者保証に関するガイドライン」に基づく対応。

⑦ 不適切な事業者の排除について

【仲介者・FA、M & Aプラットフォーム向け】譲り受け側に対する調査の実施、調査の概要・結果の依頼者への報告。不適切な行為に係る情報を取得した際の慎重な対応の検討。業界内での情報共有の仕組みの構築の必要性、当該仕組みへの参加有無の説明。

資料:中小企業庁「中小M & Aガイドライン改訂(第3版)に関する概要資料」