事例

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同じ課題を持つ他社と連携したDXで生産性向上を実現した企業

所在地 広島県広島市
従業員数 53名
資本金 1,000万円
事業内容 金属製品製造業

株式会社広島メタルワーク

▶ いち早くDX化の必要性を認識、生産管理ソフトの導入を検討するも、費用面で難航

広島県広島市の株式会社広島メタルワークは、産業用機械部品の精密板金加工などを手掛ける企業である。1995年のMicrosoft Windows 95の発売を契機に大手取引先がコンピューターによる受発注処理にシフトする中、同社の前田啓太郎社長(当時常務)は「中小企業である当社も、デジタルツールを活用した効率的な生産管理を進めなければ未来はない」と考え、DXにいち早く取り組んだ。生産管理システムを一から構築するには、費用が高額であり、またIT人材の確保も容易ではない。そこで、約3,000万円の市販のソフトを購入したが、接続台数に制限のある点がネックとなり、さらに各生産工程で必要なPC台数分をそろえるには1億円を超える費用が掛かるため、限られた工程でしか使用できなかった。前田社長は「生産管理は、受注の入口から出口までを管理することが重要」と考えており、生産工程に従事する全員がリアルタイムで各工程の進捗を把握でき、かつ導入費用が安価な生産管理ソフトの導入を模索していた。

▶ 8社の中小企業が意見を出し合い、共同でオリジナル生産管理ソフトを開発

前田社長は、大手金属加工機械メーカーが運営する後継者育成講座で知り合った中小企業8社の経営者と、生産管理の勉強会を継続的に実施していた。2003年、メンバーの一人と面識のあった静岡大学教授の協力を得たことを契機に、共同で生産管理ソフトの開発に着手。勉強会で生まれた生産管理のアイデアを取り入れ、8社のどこの使い勝手にも特化しないフラットな仕様をスタンダードとして、中小製造業に特化した生産管理ソフト「TED」を開発。「TED」の特徴は、簡易かつ直感的な操作性と、同時接続台数に制限がなく、導入費用はフルスペックで約1,000万円と大手ベンダーが提供するソフトと比較して安価である点だ。開発工程を振り返って、「自社開発では自社のこれまでのやり方を『正』として、開発が進む。他社との共同開発だと、意見を交わす中で必ずしも自社が『正』ではなかったことに気付くことができ、それがより良い開発の実現につながった」と前田社長は話す。

▶ 生産管理ソフトの導入により生産性が飛躍的に向上。過去の生産データを活用し、不良率も削減

同社は、2017年に「TED」を全面導入し、各社員のPCで受注ごとの生産工程や図面等がリアルタイムで確認可能となり、生産現場には、画面の視認性を重視して大型モニターを配置するなどの工夫も行った。導入効果として、進捗確認のため現場に行く、図面を探すといった、人員の無駄な動きが減るとともに、図面の視認性が向上したことで作業の違い防止にも寄与した。導入当初の2017年と2021年を比較すると、社員一人当たり売上高が8.6%増加した一方で、労働時間は15.9%減少し、生産性は飛躍的に向上している。さらに、「TED」導入以降に蓄積されたデータを活用し、製品ごとに過去に不良品が発生した工程をアラート表示して注意喚起することで、不良率は97%も減少した。「DXを進める肝は、今の会社の仕組みに合わせてデジタル化を進めるのではなく、既存のデジタルツールに合わせて仕組みを変えていくことだ。当然、最初は社員からの反発は出るが、結果を出せば社員の意識も変わってくる。経営者自ら未来を語りながら強くリードしていくしかない」と前田社長は語る。

前田啓太郎社長の肖像写真
前田啓太郎社長の肖像写真

前田啓太郎社長

精密加工された金属部品
精密加工された金属部品

同社が加工した製品

作業員がTEDソフトのモニターを見ながら溶接作業を行っている様子
作業員がTEDソフトのモニターを見ながら溶接作業を行っている様子

「TED」で図面や作業進捗を確認しながら、溶接作業を進める